あまり聞いたことがないかもしれないが、100万の壁、というものがある。
これは、一般的に住民税がかからない金額として知られている。
所得税と住民税は、同じ税金であるが、若干差異がある。そのうちの一つが、基礎控除の金額である。
所得税では、38万の基礎控除があるが、住民税では、33万となり、若干少ない。
例えば、給料の場合、所得税では、概算経費の最低額である65万と基礎控除38万の103万が、税金のかからない下限であるのに対して、
住民税では、概算経費の最低額である65万と基礎控除33万の98万が、税金のかからない下限になる。
ところで、100万の壁といいつつ、98万の壁ではないか、と思われるかもしれないが、実はこれがあいまいなところなのである。
住民税には、所得割と均等割という2種類がある。
所得割とは、所得(収入)に応じて計算されるもので、一般には10%である。
均等割とは、いわば最低限の場所代みたいなもので、県と市を合わせて4,000円になる。
問題は、所得割が98万の壁であり、均等割がいくらからかかるかは、自治体ごとによって異なる。つまり、所得割がかからなくても均等割がかかる場合がある。
ちなみに、所得割の98万の壁も、東京の場合は、所得35万以下課税されないことになっている。
よって、概算経費の最低額である65万と所得35万の100万が、税金のかからない下限になる。
ところで、ひとつクイズを出そう。
個人の収入を一番よく把握している役所はどこ?
税務署
と答えた方、残念。
実は、一番個人の収入を把握しているのは、
市区町村役場である。
というのも、会社員の方は、1年間の給料が支給されると、年末調整をする、しない、はあるにせよ、総支給額が確定する。
会社員の場合、源泉徴収票というものを貰うと思うのだが、実は、この源泉徴収票と同じ内容のものを、税務署と市区町村に提出することになる。
それでは同じではないか、と思われるかもしれないが、税務署は、ある程度の金額以上の人以外は提出する必要がない。
普通のサラリーマンなら、年収500万円を超えないと、提出する必要がない。
一方、市区町村は、基本的に全員提出義務がある。
また、翌年の確定申告の時期に税務署だけ手続きした場合も、税務署から市区町村に情報が伝わるようになっているため、結果として、市区町村がすべての収入(所得)を把握することになる。
麻生内閣が定額給付金を支給するときに、所得制限をするべきだ、という意見が飛び交っている時に、テレビのニュースキャスターが、物知り顔で、
市区町村が所得を把握するのは煩雑だ、
ということをいっていて、知らないことをよく堂々と言えるものだと思ったものである。